農村景観

　能登の最高峰は、半島の付け根に位置する標高637mの宝達山（山頂：宝達志水町）である。それ以外は一般に、300m以下の丘陵性山地が大部分を占め、広大な沖積平野はなく、海岸沿いに段丘がよく発達しているのが特徴である。半島の南部、羽咋市から中能登町、七尾市にかけて延びる邑知地溝帯を境として、北側の半島主部（図�U-7-1の�T）と、南側（図の�U）では、著しい差異が認められる。半島主部（�T）は、さらに、北東部（�Ta）、北西部（�Tb）、中部（�Tc）に大別される。北東部（�Ta）は、高い山が北側に偏在し、北側山地は、町野川の谷を境として、さらに、東側（�Ta1）と西側（�Ta2）に2分される。北西部（�Tb）には、高度約300mの広大な平坦面が発達している。半島南部（�U）は、半島主部（�T）にみられるような高位の平坦面がなく、急峻な地形を呈し、標高565mの石動山（中能登町）を最高とする北部（�Ua）、標高637mで能登最高峰の宝達山を含む南部（�Ub）に分けられる。

 

 

 図�U-7-1　能登半島の地形区分と主な山の概観図
（出典：�m野義夫（1965）3p）

 

　気候区分は大きく４つに分かれる（図�U-7-2）。区分�Tは、最も裏日本的特性を有し、北部沿岸一帯を含めるが、風力や風当たりの強度によって、さらに、冬季強風地域（�Ta）と、冬季風蔭地域（�Tb）に分けられる。区分�Uは、�Tbに対して、さらに風が穏やかな地域であり、地形に起因する風力の差によって、さらに２つの小地域�Ua,�Ubに分かれる。西岸地域�Vは、偏西気流の最風衝側にあたる。内陸方面�Wは、降水量・積雪量が多く、気温も低く、沿岸とは異なった気候地域となっている（図�U-7-3）。

 

 

 図�U-7-2　能登の気候区分
（出典：吉川・矢沢（1955）20p）

 

 

図�U-7-3　能登半島の年平均気温と
最深積雪量の分布（出典：石川県（1993）6p）

 

　以上の地形区分と気候区分、また、歴史的、文化的背景を考慮すると、能登半島の農村景観の特徴は、暫定的に、3つの区域に分けることができる（図�U-7-4）。1つ目は、能登半島先端の禄剛崎を境とした半島の西側で、風衝地帯である「外浦」であり、2つ目は、半島の東側で富山湾に面しており、風が穏やかな「内浦」である。3つ目は、降水量・積雪量が多い「内陸山間地」とする。また、邑知地溝帯を境とした南側（羽咋市、宝達志水町、中能登町、七尾市の一部の地域が該当）は、地形的、文化的にも大きく異なり、本来は、景観を分けて考える必要あるが、今回は、該当エリア範囲が全体の中で小さいこともあり、外浦に近い羽咋市、宝達志水町、中能登町は「外浦」、富山湾に近い七尾市は「内浦」の中でとらえていくこととする。

 

 

図�U-7-4　能登半島の農村景観の3区域

 

・外浦の景観

・内浦の景観

・内陸部（中山間地）の景観